ちひろ美術館・東京(練馬区下石神井4、TEL 03-3995-0612)で10月7日、上野動物園東園飼育展示係ゴリラ担当の北田祐二さんによるトークイベントが開かれた。
現在開催中の企画展「アンソニー・ブラウン展─ゴリラが好きだ─」の関連イベントとして行われたもので、飼育員の目線から飼育の苦労や動物園でのゴリラの暮らしぶり、2009年に誕生したコモモが成長していく様子や父親ハオコの子育ての様子のほか、絶滅の恐れがあるゴリラを守り、増やしていく取り組みについて語った。
北田さんは1980(昭和55)年、恩賜上野動物園採用管理課に配属。1983(昭和58)年、西部公園井の頭自然文化園でゾウの花子と日本リスの飼育を担当。1995年、多摩動物公園でサイ、キリン、シマウマの飼育を担当。2003年から、上野動物園でゴリラ、テナガザルの飼育を担当している。
同園では現在、7頭のニシローランドゴリラを飼育。ズーストック計画を目的に2007年、雄の「ハオコ」をオーストラリアのタロンガ動物園から迎え、2008年、雌の「モモコ」を千葉市動物公園からレンタル。すでに飼育されていた「ナナ」「トト」(いずれも雌)の4匹で群れを形成し、2009年「モモコ」との間に「コモモ」が誕生した。ズーストック計画は、国内外複数の動物園などが協力して、希少動物を計画的に繁殖させる取り組み。
北田さんは「コモモはオーストラリアと千葉、そして上野の『コラボ』によって誕生したが、実は誰もコモモ誕生シーンをライブで見た人はいなかった」と当時のエピソードを話した。「母親のモモコは2回目の出産で、その時は陣痛から2日間かかった。今回も同じように想定していたところ、2時間弱で出産が始まり、慌てておりに向かったがすでに生まれた後だった」と振り返る。
会場では、監視カメラだけが見ていたという出産シーンの映像も公開。足や手を使って子どもを守りながら出産し、口の中の異物を指で取り除く場面に会場からは「へー」と感心の声も。
講演後、「当園の場合、普段は解説員という専門担当がいるが、飼育担当の私がトークをするのは今回が初。不慣れなこともあったが、外に飛び出すチャンスを頂いてうれしく思う。動物園の取り組みを知っていただく新たなPR方法としていいのでは」と北田さん。「聴講する方の年齢層に幅があるので、内容については今後の課題ではあるが、また呼んでいただければ」とも。
今月13日、関連イベントとして同館による出張読み聞かせイベントを同園で開催。ゴリラ舎前でゴリラや猿をテーマにした絵本の読み聞かせを行う。無料(入場料別)。時間は、11時~、14時30分~。