牧野記念庭園記念館(練馬区東大泉6)で2月28日から、企画展「ツバキとサザンカ-石井勇義と牧野富太郎の友情-」が開催される。
同園は、世界的な植物学者で練馬区に居を構え「日本の植物学の父」と呼ばれた牧野富太郎博士の住居跡を整備したもの。園内には300種類以上の草木類が植栽されており、スエコザサ、センダイヤ(サクラ)、ヘラノキなど、珍しく学問的にも貴重な植物も多数見ることができる。
今回、タイトルに名を連ねる石井勇義(ゆうぎ)は牧野博士と親交の深かった園芸家。1933(昭和8)年ごろ、当時関心の低かった江戸時代の園芸植物に目を向けた石井はツバキ・サザンカの図譜出版を企画し、牧野博士が最も信頼していた画工・山田壽雄(としお)に図の制作を依頼。山田によりツバキ・サザンカの彩色図が描かれたが、1953(昭和28)年、図譜は出版されることなく石井は亡くなった。
図は一時アメリカに渡った後、石井の遺族の元に戻り、1989年に国立国会図書館に寄贈された。図を収めた帙(ちつ)(書物を包む覆いのこと)には、牧野博士が「日本産ツバキの図」と書いた表題が貼られている。
同展では、前期と後期に分けて山田が描いた彩色のツバキ・サザンカの図63点を展示する。「園芸植物に懸けた石井の情熱もさることながら、牧野博士の指導により一流の腕を持つに至った山田の一筆一筆精魂込めて描いた傑作をご覧いただければ」(同館担当者)と呼び掛ける。
期間中の2月下旬~3月中旬、同庭園内では黄色い花を咲かせるフクジュソウや白い花に淡い紫色を帯びるユキワリイチゲが見頃を迎え、多くの来園者でにぎわう。
開館時間は9時30分~16時30分。火曜休館(祝日の場合は翌日)。入館無料。前期=3月11日まで、後期=同14日~29日。