としまえん(練馬区向山3)で8月27日、「94年の歴史展」ガイドが行われた。
この日ガイドを担当した事業運営部長の内田弘さんは1981(昭和56)年入社。今年で勤続40年となる。「誰よりもとしまえんの歴史を知るスタッフ」という内田さんはこの日、当時の裏話なども交えながら歴史展の展示物を紹介した。
内田さんは「80年代、としまえんは多くの乗り物を導入した。その中でも、フライングパイレーツは全国の絶叫マシンブームの火付け役になった」と振り返る。「としまえんのフライングパイレーツが2台になった理由は、園内に2万人のお客さまがいる時に、待ち時間を20分にするためには240人乗りにしなくてはならないことが分かったから。ドイツのメーカーに依頼したところ、無理だと言われ120人乗り2台になった」と話す。
参加者からの「乗り物はドイツ製が多いのですか」との問いに、内田さんは「としまえんの乗り物の3分の2はドイツ製。ほかに、アメリカ製、イタリア製、スペイン製、日本製があるが、自動車のイメージと同じでアメリカ製は頑丈、イタリア製はおしゃれだが配線が雑、ドイツ製は完璧な図面で素晴らしく、ミリ単位でわれわれには分かりやすいため安心して導入できるなどの特徴がある」と答えていた。
内田さんによると、バブル景気に沸いた時代は若者をターゲットに絶叫マシン導入や奇抜なテレビCM制作などを続けていたが、バブル崩壊後は年間来園者数もピーク時の約400万人から年々下がっていったという。「若者が来なくなってからは、本当の遊園地のお客さんを無視していたのだな」と気が付き、ターゲットを家族客に戻し、子どもが楽しめる乗り物を導入する方針に転換したという。
「一番好きな乗り物は回転木馬の『カルーセルエルドラド』」と内田さん。導入当時、バラバラ状態で送られてきたエルドラドを当時のスタッフが苦労して組み立てたこと、初期の塗装を再現したエピソードも紹介。「実はエルドラドと一緒に、横8メートル、縦3メートルほどある自動オルガンも一緒に送られて来たが、部品が足らず整備できないため公開することなく倉庫に保管されている」とも。
カルーセルエルドラドの今後については、いったん解体し、どこかで再設置できるよう保管される予定という。内田さんは「海外のメリーゴーラウンドのようにテント型の建屋を建て、本来のメリーゴーラウンドと同じようにカルーセルエルドラドを設置し、その横にガラス張りのおしゃれな喫茶店を建てて、整備した自動オルガンの音楽を聴きながらコーヒーを飲みたい」と夢を描く。「どこまで私的な意見が通るか分からないが、関わっていられる限りは発言していきたい」とほほ笑む。
「こんなにディープなとしまえんファンがいたのかと感じる方もたくさんいて、メジャーではない乗り物に関しても質問いただくなど、本当に愛していただいていたことを思うと感慨深い。お客さまからは、どの乗り物を無くさないでほしい、残してほしいという声はたくさんあるが、どうにもならないこともある。ぜひ、としまえんで遊んだ楽しい思い出を永遠に子どもや孫に語り継いでもらえたら」と内田さん。
歴史ガイドは同日最終日の予定だったが、リクエストに応えて延長し8月30日が最終日となる。開催時間は11時30分~。定員は先着10人程度。集合場所はフライングパイレーツ下「94年の歴史展」会場。無料。
営業時間は10時~21時(プールは9時~)。現在新型コロナ感染予防対策として事前予約による入場制限を行っている。