練馬区立美術館で4月17日、「没後50年“日本のルソー” 横井弘三の世界展」が始まった。
横井弘三(1889~1965年)は長野県飯田市生まれ。1892(明治25)年に上京し、独学で絵画を学ぶ。1915(大正4)年の第2回二科展に初出品し、期待の新人画家に贈られる樗牛(ちょぎゅう)賞を受賞。横井の作品は、人をほほ笑ませるのびやかさが魅力と「日本のアンリ・ルソー」とも呼ばれ、早くから高い評価を受けた。
1923(大正12)年9月、関東大震災が起こると、震災で傷ついた子どもたちの心を元気づけたいと自作絵画の寄贈を始める。200 校以上に及んだ寄贈事業「復興児童に贈る絵」を通じ、横井は売る絵ではなく与える絵を理想とする独自の美術観を形作っていったが、同シリーズは二科展で出品見合わせを言い渡される。展覧会鑑査に疑問を覚えた横井は、二科会を離れ、「理想展」と呼ぶ無鑑査、自由出品のアンデパンダン展を自ら組織するなど既成の画壇に抗する活発な活動を展開。
その後も理想を追い求めた横井は、絵を売ることをなりわいとはせず、古書店や露店業を営みながら絵を描き続けた。中央画壇から離れた横井の名は次第に世間に忘れられていったが、今もなお横井の作品は寄留した寺や知人宅、小学校などに多く残され愛され続けている。
同展では、没後50年を機に、東京や長野をはじめ、静岡、広島など各地で所蔵される漆絵や焼き絵など多彩な技法で描いた作品200点を一堂に会し、いまだ明らかでない横井の画業の全容に迫る。会期中、関連イベントとして対談や講演会、コンサートなども予定する。
開館時間は10時~18時(入館は17時30分まで)。観覧料は、一般=800円、高大学生・65~74歳=600円、 中学生以下・75歳以上無料。月曜休館(祝日の場合は翌日)。6月5日まで。